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山田太一と語る「食と文化」
山田太一と語る 「食と文化」
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藤枝: 本日はお忙しいところありがとうございます。
又”菜の花の”HPを見て頂き、有難うございました。
本日は、「食と文化」と言うテーマで、お喋りをお願い致したいと思います。
先ず、”菜の花の”では、「本物」(=美味しいもの・少量生産のもの・安全なもの)を見つけ出して紹介し,食べて頂きながらいろいろとお話をしてゆきたい!と思っているのです。私の選んだ本物達(食材)が個人の心に潤いを与え、人と人との関係造りにお役にたつ事を、願っているのです
(ART DE VIVRE)
山田: 判りました、そうですねー。今の世の中では”ブランドもの”が悪口を云われながら力を持っています。食に限らず。これは一種の本物志向であると思います。値段は高いけれど、良質の物がある可能性が高い。
これは、何を選んで良いのか判らぬ時など、より良い物を選ぶよすがになるのですね。
衣料等ならある程度自分の目を信じる事が出来ますが、食材等は自分ではなかなか判ら ないですよねー。そのような時に、信頼している人や、選別のプロがいたり又そのルートが出来ると言う事は、非常に有り難い事だと思います。
本物が一つでも入ると、ニセ物の輝きが、サー!と色あせてしまうスゴサがほんものにはあります。そして生活を豊かにしてくれます。
藤枝: うーん。美味しいものである事が前提になりますが、本物の発見に努めております。どうしても本物は少量生産品になります。
山田: 私自身は食に対して非常に貧しい時期を過ごして来て、何でも食べられれば良かったし。
何でもが美味しかったのです。
ある年齢になって、とても美味しいと思っていたカマボコ(漁師のつくるスリミ状のもの)を食べたら、全く美味しくなっかった。
何時の間にか口(舌)がおごって来てたのですね。これには、ショックを受けました。
どんなに過去に貧しい体験があっても、その後の人生が永いために、何時の間にか口(舌)が肥えて来てしまっている事に気が付きました。
やはり、美味しいものを食べた後は、豊かな気持ちになるし、まずい物は、心がカラカラになります。
食材とか、料理人の貴重さを含めて、「食文化」と言うのでしょうか、いまとなってはやはり一級品に惹かれます。1〜2点でよいから、これこそは!と言う物に期待したいですね。
藤枝: HP上では、75アイテムですが、450以上の中から選りすぐったのです。
今後、アイテムを増やすよりも、より一品一品に拘って専門店志向を目指したいと考えています。それと食材選びでは、”先ず生産者ありき”と判断しておりますので、生産者単位の商品を紹介をしているのです。それと、お客様の送料負担率の軽減を考えると同一生産者単位でのご注文が良いと思っての事からです。
私は2年前までは、サラリーマンでしたが勤務35年間の中で、毎日が”今日の昼食”が大テーマ(何を、どこのお店で)でした。(笑い)
山田: それは凄い!35年前からの計画?
特にある地方に永く滞在する時などは、何か一つでも美味しいものが無いと辛いものです。
コーヒー一杯でも、とても丁寧に入れたものを望みたい!カップ(器)を含めて。
藤枝: 全く同感です。出張は楽しかったですよ。食べたいものを先に決めてから出張先を決めていた?特に転勤先(九州・東北・関西)は素晴らしかった。地方になればなるほど「味」はもとより、その土地に根をおろした人々の匂いがたまらなく心に響いてきた事を覚ています。
ところで、太一さんは今迄で何が一番美味しいと思いましたか?
山田: (食べれらる事が美味しい事と思う時代に育った者が、今になって美味しい!まずい!等とは絶対に云うまい!と思ってきたタブーを敢えて破って)それは、寒くなってからの富山湾のお魚ですねー。カニ(越前かに)もありました。
もう!まいた、参った!と思うほど、美味しかった。
藤枝: それは「現地」で食べたのですね?
山田: そうです!その「土地」と分かち難い物ってありますよね。 
其の土地で食べるから美味しさも、ひとしおなのかもしれません
音楽にしても其の土地で聴いたものを、家で聴いても感動が蘇らない。
何か「土」がとれてしまったと云うか、「余分なもの」がどんどん落ちてしまって・・・
藤枝: その「余分なもの」が大切なのですね。
何なのでしょうか?「余分なもの」とは。
山田: フランスのリヨン郊外のレストラン「ピラミッド」を訪れたとき、食後に「野いちご」が出たのです。今、摘んで来た!そのままの(草が付いていた)「野いちご」にミルク(牛乳)をただかけただけの物だったのですが、それにはもう感動!
しかも年配のウエイターが、ある気楽さを漂わせながら運んで来ましてねー。
こうゆう事は、日本のレストランではなかなか出来ない事ですね。
藤枝: 真に満足を与えるもの。このまま時間が止まり続けて欲しいと思うほどの安らぎ、気楽さを感じていただけるものとは。それは「何か」?を発見したいとおもいます。
年齢によって生きる目標が変わって来るものですし、私もその「何か」を発見できそうな年齢になって来ていると思います。
山田: いやー!それは素敵な事ですよ。ご苦労があると思いますが、立ち向かって下さい。
ある年齢になると、それまでは自己拡張だけで生きてきた事が空しくなって来ます他の価値観で生きたい!と思うようになってきます。
社会の中で、皆で生きているのだから。
そのように思うことによって、自分から抜け出して行けたら素晴らしいですね。
藤枝: 人間として少しずつ成長してくる来るのですね。
そのような人(物)が、日本の文化や、社会を変えて行くのではないででしょうか。
山田: そうだと思います。いろんな分野で、小さい事であっても本物を求める。
組織を守る為に、皆でウソをつく。そんな時”正直な事を云おう”!と言う人が居るか居ないかで、うんと違ってきます。
藤枝: 食品の世界でも、同じ事が沢山あるとおもいます。
高齢社会になって行く中で、正直で勇気ある者(特に年配者)こそが、今までの社会に変化を与えて行く原動力にならねばならないと思います。
ですから、高齢社会=暗いイメージ、等私には全くありません。
これからです。真の本番は!(笑い)
太一さん!最後にもう一つお話を!
山田: 山中温泉の、ある旅館の話ですが、かって100部屋あった大旅館であったものを10部屋に改造してしまった。ここでは、朝食を、何時〜何時迄に等は一切ありません。
きっと経営的には、我慢の期間があったものと思いますが、現在そのあたりの景気はあまりよくないのに、元気いっぱいと聞いています。
"菜の花の”も是非ご努力されてください!又お会いしましょう。
藤枝: 本日は山田さんのタブーを破っての食に関するテーマでしたが、貴重なお話を伺う事が出来ました。食材選びに関してお客様から信頼される一つのルートとしての”菜の花の”になれるように努力を重ねて参ります。
どうも ありがとうございました。
山田太一
山田太一(やまだたいち)
1934年 東京浅草に生まれる。
早稲田大学教育学部卒業。
1958年 松竹演出部に入社し、木下恵介監督に師事。
1965年 シナリオライターとして独立。「岸辺のアルバム」をはじめ、それまでのホームドラマの在り方を一変させる数々の作品によって、テレビドラマ作家の第一人者としての地位を確立。
主な作品に「男たちの旅路」「日本の面影」「早春スケッチブック」「ふぞろいの林檎たち」などがある。さらに、戯曲映画シナリオ・小説などでも幅広く活躍中。
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